「墓石を買うこと」は、多くの人にとって初めての経験であり、また一生に一度の経験でもあります。
石材店・墓地の運営者・購入者側のだれもが誠実であってもトラブルが起きることもありますし、逆に誰かが良くない思惑でもって事にあたることでトラブルになることもあります。
また、知識不足で問題が起こることもあるでしょう。
今回は、墓石にまつわるトラブルについて取り上げていきます。
まず取り上げていきたいのが、「宗教・宗派関係におけるトラブル」です。
墓地は、寺院などの宗教団体や公共団体、あるいは民間団体などによって運営されています。
公共団体や民間団体が運営しているところのほとんどすべてが「宗教・宗派不問」ですが、宗教団体の運営している場合は「自分たちの宗教に限る(仏教の場合は特に在来仏教に限ることがある)」という規約を設けているところもあります。
このため、公共団体や民間団体が運営しているところと同じものだと思い込んで申し込んだ場合、トラブルの元となります。
また、「宗教も宗派も不問ということだったが、檀家になるように求められた」などのようなケースもありえます。
もう1つ注目したいのが、「無宗教などの葬儀を行った場合で、かつ先祖代々のお墓が寺院墓地にある場合」です。
- ・先祖代々のお墓が寺院墓地にあるが、無宗教の葬儀とした
- ・先祖代々のお墓が寺院墓地にあるが、故人は違う宗教(キリスト教など)を信仰していたのでその宗教で見送った
- ・先祖代々のお墓が寺院墓地にあるが、「お坊さん派遣サービス」などを利用して菩提寺の住職ではない僧侶に儀式をお願いした
(※菩提寺に打診したうえで、スケジュールの都合や人員の都合がつかず、ほかのサービスを利用せざるを得なかったことが共有できている場合は除く)
などの場合は、大きなトラブルに発展する可能性があります。
「うちの墓地を利用しているのに、菩提寺ではないところで葬儀をあげた。うちの寺院を信仰していないのならば、うちの墓地は利用できません」などとこじれることもあるのです。
なお、「永代供養」のことを誤解したままで契約をしてしまった場合もトラブルが起きる可能性が高いと言えます。
「永代供養」とは、「その運営団体が続く限りは永久に供養をし続けていってくれるもの」ですが、
- ・最初は個別墓であっても合葬される場合が多いことを知らなかった
- ・「永代供養」といっても、実際には「永久に管理すること」を指しているのであってお経などを上げ続けてくれるわけではない
- ・個別墓のつもりで予約したが、実際には合同墓をお願いしていた
などのような問題が起きることもあるのです。
「お金の関係」で揉めることもあります。
墓石を建てる場合は、墓石をつくる必要だけでなく、墓地を借りるための費用も必要です。
またこれに加えて、年間管理費用などが掛かってくることもあります。
この金額は意外なほどに重く、しっかりと計算していないと予算が足りなくなることもあります。
この場合、問題の原因は
- ・消費者側の確認ミス(実際にはきちんと記載があるのに、しっかりと確認できていなかった)
- ・業者側の説明不足あるいは錯誤を招く説明によるもの
の2通りに分けられます。
墓石・墓地の購入や借用にはさまざまな料金がかかってくることを念頭に起きつつ、「記載のない項目」についてきちんと問い合わせる姿勢が求められます。
また「追加料金がかかるかどうか」についても確認が必要です。
生前契約の場合は上記に加えて、「生前契約はいつからできるのか」「契約のときに必要なものは何なのか」なども確認しておくとよいでしょう。
墓石を扱うお店(石材店)との間でトラブルが起きることもあります。
- ・そもそも墓石の材質が違う(墓石を使った詐欺行為)
- ・工事が大幅に遅れ、予定日に間に合わない
- ・文字のかすれやゆがみがある。また文字やデザイン自体が違う
- ・アフターフォローが一切ない
- ・事前に打ち合わせた金額に加えて、追加料金を請求される
などのようなケースが考えられます。
墓石は、自然の中から切り出されるものです。
そのため、「カタログとまったく同じもの」はありません。
しかし材質が違ったり、カタログと似てはいるものの安い石材を使われたりするのであれば、これは墓石詐欺にあたることがあります。
納骨のタイミングとしてよく選ばれるのは、「四十九日法要」あるいは「一周忌」のときです。
ご家族はこれに間に合うように墓石の加工を頼むのですが、石材店がこの日に間に合わせることができなかった……というケースもあります。
自分たちでも完成し、適宜進捗状況を確認するようにしたいものです。
石材店の技術が未熟であり、文字やデザインにかすれやゆがみがあったり、ひどい場合は文字やデザインを正確に墓石に落とし込めていなかったりといったトラブルが起きる可能性があります。
石材店の情報や評判をしっかり調べ、誠実な仕事をしているかどうかをチェックするようにしてください。
現在の墓石は非常に品質が良く、欠けなどが起きる可能性は極めて低いといえます。
ただ、加工技術が未熟であったり、きちんとした石材を使っていなかった場合はこの類のトラブルが起きやすくなります。
契約前にきちんと確認しましょう。
「追加料金を請求される」といったトラブルは、墓地の契約のときにだけ起こるわけではありません。
墓石でも同じことが起きる可能性があります。
これらのなかには、消費者がどれほど気を付けていても避け切ることのできないトラブルもあります。
しかし、その墓地や石材店の特徴をよく理解し、またその評判を調べ、契約書をしっかり読み込むことでトラブルが起きるリスクを下げることができます。
最後の住処を建てる際にトラブルが起きてしまうと、悲しい気持ちになってしまうものです。
消費者側にも正しい知識と、トラブルを未然に防ぐ努力と、またトラブルが起きたときにしっかりと戦っていく覚悟が求められているといえるでしょう。