弔いのかたちが変わっていく現在、お墓にも「レンタル」の考え方が生まれました。
今回はこの「お墓のレンタル」について考えていきます。
目次
「お墓のレンタル」には、以下の2つの種類があります。
- 墓石のみを借りるスタイル
- 墓石と墓地を両方一緒に借りるスタイル
それぞれの違いは後述しますが、共通する特徴として以下のようなものがあります。
多くの「お墓のレンタル」は、10年を最長としてレンタルしていくことになります。
10年を過ぎれば、お墓は墓地の運営者あるいはサービスの運営者の手元に帰されます。
基本的には、「お墓のレンタル」はレンタル期間が過ぎたら無料で合祀墓に入れられることになります。
このため、無縁仏となるリスクがありません。
祭祀継承者がいない人でも気軽に使えるサービスであること、また元気な間は残された家族が頻繁にお墓参りができるのもメリットです。
一般的なお墓は、撤去するときにお金がかかります。
この金額は非常に大きく、「もう地元に戻らないので改葬したいが、改葬する費用が大きくてなかなか思い切れない」という人もいます。
しかしお墓のレンタルの場合、この心配はいりません。
この「お墓のレンタル」は、「最初は個別のお墓を建てておき、時間が経ったら合祀する」というタイプの永代供養と似ています。
しかし違う点もあります。
もっとも大きな違いは、「個別の墓石を持たないため、初期費用が格段に抑えられる」という点です。
墓石の相場は100万円~120万円程度、これに加えて墓地の値段が加わりますから、お墓全体にかかる費用の平均は150万円~200万円程度です。
しかし「お墓のレンタル」の場合は、この費用がぐっと抑えられます。
また、「時間が経ったら合祀する」にも違いがみられます。
詳しくは個々の運営者に確認する必要がありますが、「最初は個別のお墓を建てておき、時間が経ったら合祀する」というやり方の場合、多くのケースで「三十三回忌」をひとつの目安とします。
しかしお墓のレンタルの場合、10年を一区切りとしているところが比較的多く見られます。
もっともお墓のレンタルの場合でも、「10年以上は応相談」「20年め以降でも利用できる」としているところもあります。
「墓石のみを借りるスタイル」のお墓のレンタルは、墓地ごと借りるものとは異なり、埋葬場所を問わないというメリットがあります。
日本全国どこの墓地であっても利用できるのが基本であり、近場に「お墓のレンタル」をやっている墓地がなくても使うことができます。
また、墓石のみを借りるスタイルの方は、墓石のデザインも多種多様であることも多く、選ぶ楽しみもあります。
なお「レンタル」としていますが、きちんと名前は彫り込まれます。
このかたちの場合は、「月額〇円」として貸し出していることが多いといえます。
そのため毎月わずかな負担でお墓を利用できます。「自分たちの心に整理がついたら合祀にする」などのようなやり方をとっても構いませんし、「夫の遺骨を納めたが、自分が死んだら一緒に合祀してほしい。
それまでの間だけお墓を維持したい」と考える人にも向いているでしょう。
ただこのかたちは、「総額」の面にも目を向けなければなりません。
月額の費用は5000円~20000円程度(ただし、利用年数が長くなれば値引きをするところも多く見られます)です。
単純計算をしたとき、20000円のプランならば10年で240万円となってしまいます。
これは一般的な墓地を購入できてしまう値段です。
年数がかさめば、さらに金額は大きくなるでしょう。
場合によっては、「最初は個別のお墓とし、三十三回忌をきっかけに合祀してもらう」というプランを選んだ方が負担が少なくなるでしょう。
「墓石だけでなく、墓地もレンタルできる」というタイプに注目していきます。
ここでは以下、「墓地+墓石のレンタル」とします。
墓地+墓石のレンタルは、特定の運営者(寺院など)が執り行っていることが多いものです。
10年を基本としますが、「最長で20年までOK」としているところもあります。
墓地+墓石のレンタルの場合、墓石のみを借りるケースとは異なり、レンタル費用が安いのが大きな特徴です。
10年間のレンタル費用の相場は30万円~40万円といったところです。
さらに年間の管理費用が10000円前後かかることもありますが、総額でも50万円~60万円程度に収まることが多いといえます。
寺院が管理している墓地+墓石のレンタルサービスの場合、レンタル期間が過ぎれば合祀されるのが一般的です。
しかし「改葬を希望される場合はご遺骨をお渡しすることもできる」「同じ墓地内で、別の弔い方法に変えることもできる」としているところもあります。
金額面でもメリットの多いスタイルではありますが、このスタイルの場合は自由度が低いのが難点です。
「墓地とお墓がセットになっている」というかたちであるため、当然ほかのところではこのサービスを選ぶことはできません。
近くにこの「墓地+墓石のレンタル」のやり方をとっているところがなければ、利用することができないのです。
また墓石のデザインは、墓石のみのレンタルに比べてバリエーションが乏しい傾向にあります。
「お墓のレンタル」は、比較的新しいサービスのように見受けられます。
そのためまだまだ浸透しているとはいえません。
多くのサービス業者・運営団体が試行錯誤している段階でもあります。
そのため利用に制限が出たり、価格面で不安に思ったりすることもあるでしょう。
ただこれから先はますます注目されていくであろうお墓の形態のひとつではあると思われます。
また、新しい弔いのかたちが提案されれば、それだけ選ぶ側の選択肢が増えることになります。
そしてこの「増えた選択肢」は、「より自分らしい、より自分に合った埋葬方法」を考えるために役立ちます。