ドラマや映画などで、お墓の後ろに木札が立っているのを見たことのある人もいるのではないでしょうか。
昔は実際のお墓でも比較的よく見られたものですが、現在は「現物を見たことがない」という人もいるかもしれません。
ここではこの木札の意味について解説していきます。
お墓の後ろに立っている木札は、「卒塔婆(そとば)」といわれるものです。
卒塔婆は、サンスクリット語の「ストゥーパ(『仏塔』を意味する言葉)」が語源だといわれています。
一般的に「木札」という表現はあまり使われませんから、ここでは「木札(卒塔婆)」として解説していきます。
木札(卒塔婆)には、仏教のお経やご先祖さまへのお礼などが書かれています。
語源からも分かるように、木札(卒塔婆)はもともとは「仏塔」の代わりとして使われていました。
木札(卒塔婆)はでこぼこした形をしていますが、これは塔の階層(五重塔)を模しているからだといわれています。
木札(卒塔婆)が現在のような形になっていったのは、時代によるところが大きいといえます。
仏教は538年(552年とする説もあります)に日本に伝わってきましたが、木札(卒塔婆)もすでに平安時代には建てられていたとされています。
しかし昔の木札(卒塔婆)は、石で作られていましたし、また今の木札(卒塔婆)よりもずっと形が複雑でした。
また昔は、「卒塔婆」の語源である「仏塔」を実際に建てる支配者層も見られました。
卒塔婆が現在のような「木札」になったのは、「仏塔」を実際に建てることのできない庶民が「なんとかそれでも供養ができるように」と考えて、非常に簡略化した石の塔を建てていました。
この石の塔が、そのうち木の塔に代わり、現在のような「木札(卒塔婆)」になったのだと考えられています。
現在の木札(卒塔婆)が、「追善供養」の意味を持って建てられることが多いといえます。
追善供養とは、「残された人間が功徳を積むことによって、故人の徳とする」という考え方です。
また故人そのものに対して行う供養のことも指します。
初七日法要なども、この「追善供養」に当たります。
さて、木札(卒塔婆)は仏教の文化であり仏教の葬送に使われるものであることはすでに述べました。
つまり、キリスト教や神道ではこれは用いません(ただし、神道の場合はもともと仏教と一体化したものであったこと、また似たようなものとして「追祭標」と呼ばれるものを用いる地域もあります)。
また意外に思われるかもしれませんが、在来仏教でも木札(卒塔婆)を用いない宗派があります。
それが、「浄土真宗」です。
浄土真宗は、在来仏教のなかでも死生観がほかの宗派とは大きく異なることでよく知られています。
浄土真宗の場合は、「亡くなった方はすぐに成仏する」と考えます。
このため、追善供養のために用いられる木札(卒塔婆)は、浄土真宗では使うことがないのです。
浄土真宗を信仰している人の場合は木札(卒塔婆)を用いる必要はありませんし、また御寺側でもこれを勧めません。
ちなみにこのような死生観をとる浄土真宗の場合、ほかの宗派ではよくみられる「冥福を祈る」という表現は使いません。
加えて、香典にも「御霊前」の表書き(通夜や葬式・告別式で用いられる書き方)も使わず、通夜や葬式・告別式でも「御仏前」とします。「御仏前」は、ほかの宗派の場合は四十九日以降の書き方です。
木札(卒塔婆)は、それぞれの宗教・宗派の死生観が密接に関係しています。
これを失くしては木札(卒塔婆)のことは語れません。
では、木札(卒塔婆)を用意するにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは木札(卒塔婆)の手配方法を紹介します。
木札(卒塔婆)の手配方法は、以下の4つに大別されます。
- 1.専門業者に頼む
- 2.寺院に頼む
- 3.葬儀会社に頼む
- 4.霊園(墓地管理者)に頼む
それぞれ見ていきましょう。
卒塔婆や墓標などを専門的に扱う専門業者に依頼する方法です。
この方法の場合、大きさなどを細かく設定することができる場合が多いため、希望通りの木札(卒塔婆)を建てたい人やスペースの問題で悩んでいる人でも使いやすいのが特徴です。
バリエーションも豊富であり、予算にあったものを選びやすいのもメリットです。
木札(卒塔婆)は、寺院に頼むのが正式です。
寺院墓地を使っているのならばその寺院に、「寺院墓地ではないけれど、菩提寺はわかる」という場合はその菩提寺に連絡をしましょう。
葬儀会社のなかには、木札(卒塔婆)の注文を受け付けているところもあります。
ただし実際には、「葬儀会社が間に立って、寺院に連絡をつける」とするやり方をとっているところが多いようです。
葬儀のときにお世話になった担当者を介してお願いできるため、頼みやすいという特徴があります。
使っている墓地があるのであれば、その墓地の管理者に木札(卒塔婆)について尋ねるのも良いでしょう。
霊園(墓地管理者)側で木札(卒塔婆)を手配してくれることもあります。
また置ける大きさなどについても細かく聞くことができます。
木札(卒塔婆)の値段は、明確に定められているわけではありません。
ただ、3000円~5000円程度が比較的よくみられる金額です。
なお木札(卒塔婆)を手に入れても、木札(卒塔婆)を立てかけるための台がなければ木札(卒塔婆)を収めることができません。
そのため木札(卒塔婆)を用いる予定があるのであれば、「木札(卒塔婆)立て」も用意するようにしなければなりません。
これの手配は、墓石を用意した石材店に連絡をするとよいでしょう。
もちろん、赤沢石材店でも木札(卒塔婆)立てをご用意することができます。
「木札(卒塔婆)」は、残された人間が故人を思い、思いやる気持ちを託してつくるものです。
贈りたいと考えるのであれば、木札(卒塔婆)を手配できる先に声を掛けてみるとよいでしょう。
その気持ちはきっと故人に届くはずです。