「香典返し」は、不祝儀を渡してくれた人に対してお返しするものをいいます。
特段の事情がない限りは、ビール券や商品券は避けて「物品」というかたちでお渡しします(ただし、一部の地方やご家庭、また故人のご意向がある場合などは、ビール券や商品券などを選んでも良いとされます)。
今回はこの「香典返し」の金額の相場について取り上げていきます。
なお、本来は「香典」という言葉は仏教用語にあたります。
しかし相当する言葉がほとんどないことから、神式やキリスト教、また無宗教の葬儀においても、広く「香典返し」の言葉が使われています。
今回もこれに基づき、「香典返し」という言い回しを使っていきます。
まず、香典返しの金額の相場の基本を解説します。
香典返しの金額の相場は、「頂いた不祝儀の2分の1~3分の1」です。
つまり30000円の不祝儀を頂いた場合は、香典返しは10000円~15000円程度の品物を見繕うことになります。
「2分の1」とするか「3分の1」とするかは、それぞれのご家庭や地域性などによって異なります。
不安ならば、葬儀会社の社員などに目安を聞くようにするとよいでしょう。
上でも挙げたように、香典返しは基本的にはビール券や商品券などのように「直接的に値段がわかるもの」は避けます。
またナマグサ物も避けましょう。
よく選ばれているのは、洗剤などのキエモノや、タオルなどの汎用性の高いものなどです。
また現在はカタログギフトもよく選ばれています。
香典返しの正式なマナーは、「四十九日後~1か月以内に、直接お家に伺って手渡しをする」です。
ただし現在は郵送で送ってもよいとされています(挨拶状は必須です)。
また後述しますが、四十九日前に香典返しを渡すこともあります。
上でも述べましたが、香典返しは「頂いた不祝儀の金額の2分の1~3分の1を、後日お持ちする」というかたちが正式です。
しかし現在では、「香典返しを即日お渡しする」とするやり方も出てきています。
これは「即日返し」とも呼ばれるやり方です。
葬儀に足を運ぶ人のなかには、「それほど親しくはないけれど、義理もあるので足を運んでいる」「少額の不祝儀となるので、後日の香典返しは必要がない」などのような人もいます。
香典の金額が3000円~10000円の人も多く、このような人に後日改めて香典返しをするとなると喪家側の負担が非常に大きくなります。
また、「丁寧なのはありがたいが、そのために日を空けておかなければならないのも困る」と感じる人もいるでしょう。
そのため、「10000円以下の人に対しては、弔問を頂いたとき(通夜や葬式)のときに、受付などで香典返しをお渡しして完結する」というやり方がとられるようになりました。
この方法ならば後日香典返しをお送りする手間がありませんし、不祝儀を出す側としても負担なく受け取ることができます。
不祝儀はその場で開いて、金額を検めることはできません。
そのため、原則として「すべての人に同じ物をお渡しする」というかたちをとることになります(ごくごくまれに、「お渡しいただく金額を推測し、それによって即日の香典返しの物品を選んでお渡しする」というやり方がとられることもあります。
しかしこの方法は、受付の人が相手の顔と立場を知っていることが前提となるので、あまり現実的ではありません)。
即日の香典返しの相場は、10000円の人に合わせます。
3000円~5000円程度の香典返しを用意することになるでしょう。
10000円以下の不祝儀を寄せてくれた人に対する香典返しは、この「即日返し」で完結します。
ただし、10000円以上の金額を包んでくれた人には、後日改めて香典返しをお送りするのが基本です。
「即日の香典返しで終わりにすることができるのは、10000円の不祝儀まで」としました。
ではそれ以上の金額の場合はどうすればよいのでしょうか。
上でも述べたように、30000円までの場合は2分の1~3分の1の金額で香典返しを見繕ってお渡しすることになります。
しかし、親族などの場合は、10万円を超える金額を包んできてくれることもあります。
頂いたお気持ちはうれしいのですが、この「10万円」という大きな金額に対して、2分の1~3分の1の金額を返すのはなかなか大変なものです。
不祝儀は相互扶助の精神の元で出されるものですから、律儀に2分の1~3分の1の金額の香典返しを行うとなると、家族(遺族)にとって大きな負担になりかねません。
このため、香典返しの金額にも「上限の目安」があります。
この「上限の目安」の金額は、15000円程度とされています。
30000円の不祝儀を頂いた場合は15000円を上限として香典返しをお渡ししますが、10万円(あるいはそれ以上)を頂いた場合でも15000円程度の香典返しをお渡しすれば失礼にあたらないとされています。
もちろん、「慣習的に、親族間であってもきっちり2分の1~3分の1返しをしている」「お気持ちがうれしいし、経済的に困窮しているわけでもないのでしっかりとお返ししたい」ということであれば、金額に応じた香典返しを選んでも構いません。
ただ、「上限は15000円程度であり、それくらいの価格帯の香典返しを送れば失礼にはならない」ということは抑えておくとよいでしょう。
なお、香典返しの金額が大きくなった場合、お返しする物を選ぶのが大変になることもあります。この場合はカタログギフトを選ぶとよいでしょう。カタログギフトならば、お返ししたい金額に合わせたものを選びやすいといえます。また渡された相手も自分の好きなものを選べます。香典返しの物品としてタブーなナマグサ物も、カタログギフトから選ぶ分には問題ありません。
不祝儀は、弔意とともに相互扶助の精神をもって渡されるものです。
その気持ちをありがたく受け取るとともに、きちんとした香典返しをお渡しするようにしましょう。
(※なお、相手から「香典返しは不要です」と言われた場合はその気持ちを尊重するようにしてください)。