さまざまな理由で墓地(お墓)を移転したいと考える人もいることでしょう。
ここでは、墓地(お墓)の移転について解説していきます。
目次
「墓地の移転」には、2つの意味があります。
1つは「霊園を移転すること」、もう1つは「(個別の家庭の)お墓を移転すること」です。
前者の意味での「霊園の移転」の場合は、霊園を運営している団体(地方公共団体や宗教法人、公益法人など)が、都道府県知事に許可を取ってから行います。
ただし、市街地再開発事業などによって移転を余儀なくさせる場合は、市街地再開発事業などの許可をもって、この許可が下りたものと考えます。
この場合、墓地使用者の承諾を得るか、墓地使用者に対抗することのできる裁判の謄本を得てから行う必要があります。
墓地の移転は使用者の気持ちの面から考えてもなかなか難しいものです。
そのためさまざまな手続きが必要となります。
後者の場合は、それぞれの個別の家庭が、「お墓を移したい」と考えたときに実施するものです。
単純に「墓地の移転」とした場合、日本語的には前者を指すことになります。
しかし一般的に求められているのは、後者の方でしょう。
そのためここでは、「墓地(お墓)の移転」として、後者を大きく取り上げます。
これ以降の記述においては、特に記載がない限りは、「個別の家庭のお墓を移転すること」=墓地(お墓)の移転、と考えてください。
また、前提として次のような状況にあるものと仮定します。
1.今までは、屋外の墓地を使っており、そこに一般的なお墓を建てていた
2.引っ越し先に永住することになったので、もう地元には帰らない
3.お墓をお世話する人もいないので、墓じまいとする
4.引っ越し先で新しく墓地を確保し、お墓を建てる
5.引っ越し先の霊園はすでに決まっている
6.信仰している宗教は仏教であり、宗派は在来仏教である
出典;
国土交通省「都市再開発における墓地移転等に関するマニュアル」
墓地(お墓)の移転は、簡単に行えるものではありません。
以下のやり方に従って、手順を守って行う必要があります。
今まで使っていた霊園に話をし、「墓地(お墓)の移転を考えていること」を伝えます。
丁寧にお礼を言い、墓地(お墓)の移転のための書類作りなどを手伝ってくれるようにお願いをします。
たとえば、改葬申請に必要な「埋葬・埋蔵証明書」は元々使っていた霊園に作ってもらわなければなりません。
新しく移ることになる霊園の運営団体・管理者に話をします。
そして「受入証明書」を出してもらいます。
次に、改葬許可書を作ります。
改葬許可所は、改葬元の市町村役場からもらうことになります。
この改葬許可書は、「元々の霊園」ではなく、「改葬元の市町村役場」が管轄しているので間違えないようにしてください。
市町村役場に直接行っても構いませんが、市町村役場のサイトからダウンロードすることができる場合もあります。
「新しい霊園からの受入証明書」「元々の霊園の埋葬・埋蔵証明書」「改葬許可書」の3つの書類を用意して初めて、改葬許可申請を出すことができます。
滞りなく書類を提出できたら、改葬許可証が発行されます。
これがあれば、埋葬していたご遺骨を移動させることができます。
閉眼供養とお墓の取り壊しを行います。
閉眼供養とは、お墓から魂を抜くための供養で、僧侶を呼んで行います。
また閉眼供養を行ったら、お墓の取り壊しを行います。
お墓の取り壊しはご自身ではできませんから、必ず石材店にご連絡ください。
意外に思われるかもしれませんが、墓地は「借りた人のもの」ではありません。
あくまで「永代にわたって使用する権利」を持っているだけで、墓地(お墓)の移転となると、その土地はもともとの所有者である管理団体に返すことになります。
つまり、「新しいところに墓地(お墓)の移転をするから、もともとの墓地(お墓)をだれかに売ろう」とすることはできません。
また、譲渡や貸し出しもできません。
墓地(お墓)の移転が終わったら、新しい移転先に「改葬許可証」を出します。
そしてご遺骨をお墓に納めます。
このときは、開眼供養(納骨法要)を行います。
開眼供養とは閉眼供養と対になるもので、魂を入れるための法要をいいます。
このときも僧侶を呼んで行います。
ここからは、墓地(お墓)の移転に関係する注意点について紹介していきます。
一度合葬や自然葬を選んでしまうと、原則として墓地(お墓)の移転はできません。
樹木葬の一部では例外もありますが、合葬はほかの人のご遺骨と混ざってしまいますし、海洋葬は海にご遺骨を撒いてしまいます。
樹木葬もその大半が、土の中にご遺骨を埋めるというスタイルです。
そのため、一般的なお墓→合葬や自然葬への切り替えはできても、合葬や自然葬→一般的なお墓への切り替えはできないと考えるべきです。
墓地(お墓)の移転には、お金がかかります。
だいたい200万円~300万円程度の出費が必要です。
お墓の取り壊しには50万円ほどの予算をみておきたいものですし、新しいお墓を建てるときにも200万円程度かかります。
ここに閉眼供養や開眼供養のお金が乗ります。
また、離檀料が発生することもあります。
「新しいお墓を建てるのは経済的に厳しい」という場合は、納骨堂を利用したり自然葬を利用したり、手元で供養していったりすることもできます。
ただし、合葬や自然葬の場合は、上であげたように、「再度の墓地(お墓)の移転」はできないと考えてください。
なお手元供養を行う場合は、受入証明書などがなくても構わないとする説もあります。
ただこのあたりは自治体によって判断が異なりますから、必ず自治体に確認をしてください。