「葬式」は、だれもが耳にしたことのある言葉です。
ただ似たような言葉として「葬儀」などもあるため、この使い分けで混乱する人もいるかもしれません。
特に専門サイトによっては、「この2つは明確に違うもの」と位置付けられているため、余計に迷う人もいるでしょう。
ここでは葬式と葬儀の違いを取り上げつつ、ほかの葬送儀礼に関する言語の意味も紹介していきます。
まずは、「葬式」と「葬儀」の違いについてみていきましょう。
この2つは非常に不思議な言葉で、「明確に違いがある」とされながらもその「明確な違い」が専門サイトによって異なるものです。
また、「この2つは同じものである」とする考え方もあります。
例を見ていきましょう。
「葬儀とは宗教的な儀礼を含む言葉であり、葬式とは葬送儀礼全体を指す言葉である」
「葬式とは通夜の翌日に行われる宗教的儀式を含むことが多いもので、葬儀はお別れのかたち全体を含む」
「葬式も葬儀も同じもので、言い換えである」
このように、専門サイトや辞典によって解釈には違いがみられます。
また、葬儀会社の認識も異なることがあり、どの認識が正しい・正しくないとはいえないのが現状です。
この2つを「まったく違うものであり、使い分けるべき」とする説もありますが、
- ・定義づけが非常にあいまいであること
- ・また実際の葬送儀礼のなかでも混同して使われることもあること
から、この2つを明確に分けて考えるのは困難であるといえるでしょう。
このため、サイトごと・葬儀会社ごとによって定義づけや使い方は異なります。
どれが正しいとはいえませんが、ここでは2番目の意見を採用し、「葬式は通夜の翌日に行われるもの、葬儀は葬送儀礼全体を含むもの」として解説していきたいと思います。
葬送儀礼にまつわるほかの言葉としては、特に「通夜」が有名です。
しかしこの「通夜」にも、数多くの言葉があります。
- ・通夜
- ・半通夜
- ・本通夜と仮通夜
ひとつずつ見ていきましょう。
「おつや」全体を含む言葉であり、もっとも一般的な言葉だといえます。
かつてはご遺体を守るための火をともし続けなければならないため、本当に一晩を通して親族で火の守りをしていました。
しかし現在ではこのようなかたちはあまり見られません。
今は、「葬式の前日の夜に行うもので、2時間程度で切り上げられる、宗教的儀式を含むことが多いもの。
これが終わったら通夜振る舞いを行い、親族も就寝する」というかたちが一般的になりつつあります。
「半通夜」はある意味で「通夜」と同じであり、また違うものでもあります。
上でも述べたように、かつて通夜とは「一晩中だれかが起きていて、故人を守るため」のものでした。
しかしその時分~過渡期において、現在のように「2時間程度で参列者が辞し、親族も眠りに就く」というやり方も取られていました。
これは当時の「通夜」とはかたちが異なるため、特に「半通夜」と呼ばれていたという経緯があります。
現在も「半通夜」の単語が使われることがありますが、「かつての半通夜」=「現在の通夜」のかたちに完全に変わりつつある今、出現頻度は減っていくであろうと考えられています。
この2つはセットで説明した方が混乱が少ないでしょう。
「本通夜」とは、今でいう「一般的な通夜のかたち」です。
故人が息を引き取った翌日の夜に行われ、参列者を招き入れ、宗教的儀式を行いながら故人の死を悼みます。
ただ、特に「本通夜」と書く場合は、前日に行われる「仮通夜」とセットになっていることが多いといえます。
「仮通夜」とは、本通夜の前日である故人が亡くなった当日の夜に行われることがあるものです。
この仮通夜では、参列者は招きません。
あくまで近しい親族(特に家族)のみが出席するものです(ただし、家族同然に付き合っていた友人などは出席することもあります)。
仮通夜は、宗教者を呼ぶ場合と呼ばない場合があります。
呼ぶ場合は枕経(まくらきょう)を読んでもらうことになります。
枕経とは、文字通り、故人の枕元であげるお経のことです。
ただし、枕経と仮通夜であげるお経は違うものであると考える宗教者もいますから、このあたりについては確認してください。
焼香を行うかどうかは、その家族の判断にゆだねられます。
なお、宗教者を呼ばない場合は、家族や親族だけで手を合わせてしずかにお見送りします。
これ以降は、特記しないかぎりは、一般的なおつやは「通夜」とします。
「告別式」は、一般的に「通夜の翌日に行われるものであり、宗教的な儀式を含まないもの」と解釈されます。
たとえば仏教の場合のお葬式はお経などを伴いますが、告別式の場合は原則としてこれを行いません。
もっとも現在は、「宗教的儀式(読経や焼香)の後にそのまま告別式に移る」という形式が増えています。
このためこの2つを分けて行うことは非常に珍しいといえるでしょう。
多くの場合、宗教的儀式に続いて(時間を分けることなく)告別式に移行するため、「葬式に参加している人はそのまま告別式にも参加する」というかたちをとることになります。
ここまで葬送儀礼に関する言葉の違いや意味を説明してきました。
ただ、葬送儀礼のかたちに地域差や葬儀会社による差、またご家族の間での認識の違いがあるように、これらの言葉の違いもまた、解釈によって異なるものです。
使い方を間違えたからといって責められることはありませんし、問題になることもあまりないでしょう。
そのため、過度に気にする必要はありません。
大切なのは言葉の使い分けではなく、「どのように故人に向き合い、大切な人の死を考え、残された人間が生きていくかを考えること」です。
葬送儀礼はそのためにあるものです。
それにしっかりと向き合うことができるようにするのが、葬送儀礼の役割なのです。
もっとも、わからないことがあるなかで葬送儀礼を行っていくのは不安もあろうかと思います。
その場合は、葬儀会社や石材店に何でもお問い合わせください。