お墓は、決して安いものではありません。
そのため、「もしお墓を建てるときに、税金などがかかるのであればその分もしっかり計算に入れておかなければ」と考える人もいることでしょう。
ここではあまり注目されることのない、「お墓と税金」について取り上げます。
お墓を建てるときには、墓地の「土地」を使うことになります。
この土地にかかる費用は、「その土地の地価」に大きく影響されます。
地価が安いところと地価が高いところを比べた場合、安いところの方が安価で利用できるわけです。
この「土地の金額」の違いは非常に大きく、100倍以上もの価格差が生じることすらあります。
このようなことをわかっていると、「お墓にも、不動産所得税や固定資産税の税金がかかるのではないか」と思ってしまいます。
しかし実際には、お墓には不動産所得税や固定資産税はかかりません。
これはお墓の土地の持つ、特殊な事情にあります。
私たちは「お墓を買う」という表現をよく使います。
しかしこれは、ある意味では正しいのですが、ある意味では間違った表現だといえます。
私たちは確かに墓石を購入していますが、墓地は「購入」しているのではなく「借りている」だけなのです。
永代使用料はあくまで「使用料」であって、「土地を購入したお金」ではないのです。
借りているだけの土地ですから、不動産所得税や固定資産税といった税金がかかることはありません。
お墓は、「買う」という表現がよく使われること、また実質的には「自分たちの家の墓地」として使えることから、「借りているもの」という認識が薄くなりがちです。
しかし実際にはその土地は、墓地利用者の所有物ではありません。
そのため、税金は発生しないのです。
なおこのような特性を持っているため、墓地を自由に売買することもできません。
墓じまいをしたとしてもその土地を、使用者の一存だけで他者に譲ることは実質上無理なのです。
この場合は、たとえ永代使用料を払い込んだ後であっても、墓地は墓地運営者・管理者のものになります(もっと正確に言えば、「墓地運営者・管理者の手元に戻ります」)。
また、永代使用料は返却されないものだと思っていてください。
上記でお話ししたように、お墓の「土地」には固定資産税などの税金が加算されることはありません。
それでは、墓石はどうなのでしょうか?
墓石は、お墓の「土地」とは異なり、原則として「購入」するものです(※現在はレンタル墓石なども出てきていますが、ここでは考慮対象から外します)。
このため購入する際には、一定の消費税がかかります。
消費税は税金の一種ですから、このような観点から見れば、「お墓の購入には消費税がかかる」といえるでしょう。
ここで注目したいのが「軽減税率」の考え方です。
2019年の10月に消費税が8パーセントから10パーセントに上がったことは、記憶に新しいことでしょう。
またこのときに、「軽減税率」の考え方が提示されました。
これは、「生活必需品などの特定の品目においては、消費税を10パーセントとせず、8パーセントとする」というものです。
お墓にかかる費用は個人差がありますが、200万円程度と考えておくとよいでしょう。
この場合、軽減税率が適用されるかどうかで、40000円程度も変わってきます。
残念ながら、お墓は「生活必需品」とはみなされません。
そのため、2019年の10月以降にお墓を建てた場合は、10パーセントの税金が課せられます。
ただし2019年の10月以前に引き渡しまでは済んでいる場合あるいは2019年の3月31日までに工事の契約が終わっている場合は8パーセントで建てることができていました。
2020年10月現在以降にお墓を手に入れようとする場合は、すべて10パーセントの税金がかかります。
このため、消費税が上がる前に、お墓の「駆け込み需要」が増えたとされています。
なおこの消費税は、あくまで「墓石」にかかるものです。
繰り返しになりますが、墓地はあくまで「借りているもの」です。そのため2019年の10月以降であっても、樹木葬などを選択すれば消費税の影響はほとんど受けません。
ここまでは「お墓を建てるときの税金の話」について触れてきました。
最後に、これも非常に大きな税金のかかる「相続税」についてみていきましょう。
実はお墓は、相続税対策に使えるものなのです。
お墓は「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、相続財産とは別個の扱いがなされます。
一般的な財産は相続税がかかりますし遺産分割の対象となりますが、お墓などは相続税がかからず、また遺産分割の対象となりません(ちなみに祭祀財産の場合は、相続をさせる人間の意思が尊重されるため、口頭で「この人を祭祀継承者に」と指定することができます)。
もちろん、「一般常識的にみて、あきらかに常軌を逸脱するほどの豪華すぎるもの」に関しては課税対象となりますが(たとえば金100パーセントの仏像など)、そうではないものは課税対象とならないのです。
このため、相続税の負担を軽くするために、事前にお墓や仏壇を購入しておくことを検討する人も多くいます。
仏壇とお墓の購入費用は300万円近くになることもありますから、この金額を非課税対象とすることができるのはかなり大きいといえます。
ただし、非課税対象となるのはあくまで「すでに購入済みのもの」です。
ローンを組んで払っているものの場合は、相続財産外とされることはありません。
「故人が旅立った後に、家族がお墓や仏壇を購入する場合」は、相続税が引かれた後の財産から購入することになります。
このため終活をしているのであれば、少しでも家族の負担を軽くするために、お墓や仏壇の生前購入をすることをおすすめします。
税金とお墓・仏壇の関係はなかなか複雑です。
祭祀財産としての側面を持つこと、土地を「購入」するわけではないこと、埋葬方法によって税金の影響度合いが変わってくるからです。