人にはいろいろな事情があります。また、経済的な面から見た環境も、ご家庭によって大きく異なります。
裕福な家もあれば中流の家もあり、また生活保護を受けている家もあります。
生活保護世帯で人が亡くなった場合で、かつお金がない場合はどのようにして葬送に向き合っていけばよいのでしょうか。
目次
しばしば、「葬儀費用もない」「生活保護世帯には、葬儀を挙げる権利もない」などのような声を聞くことがあります。
しかしこれは正しくはありません。
日本の場合、生活保護を受けていた人が亡くなった場合、自治体から葬儀費用を受け取ることができるのです。
このお金を使うことで、生活保護世帯であっても葬儀を行うことができます。
このようなかたちの葬儀は、「生活保護葬」「福祉葬」「民生葬」とも呼ばれています。
日本においては、最低限のかたちではありますが、亡くなった人や故人の家族に寄り添うべく、実隊がきちんと支援を行っているのです。
生活保護葬は、だれでも挙げられるわけではありません。
- 葬儀を執り行う人(施主・喪主)が生活保護を受けており、葬儀を自力で挙げることができない
- 亡くなった本人が生活保護を受けており、かつ家族以外の人間がその人の葬儀を行う場合
の2つのケースで、「生活保護葬」を選択できるようになっているのです。
1の場合は、「自分の子どもが亡くなったが、生活に困窮しておりずっと生活保護を受けている」などのようなケースが考えられます。
2の場合は、「まったく身よりのない人が亡くなった」などです。
身よりがなく、連絡も取れない場合は民生委員などがこの人の葬儀を行います。
そのような場合、民生委員などに経済的な負担をお願いすることはできないため、自治体が生活保護葬のための費用を払うことになるのです。
そしてこの制度を、「葬祭扶助制度」といいます。
生活保護葬は、残された家族にとって負担が極めて少ない(あるいは生じない)かたちでの葬儀だといえます。
しかしその分、制限は厳しいと考えておいてください。
最初の制限として、上記で挙げた「生活保護葬を挙げられる人の条件は決まっていること」が挙げられます。
またこれをクリアしてもほかの問題が待ち受けています。
生活保護葬の場合、支給される金額には限度があります。
自治体によって多少の違いはありますが、成人ならば20万円前後、子どもの場合は17万円前後の支給額にとどまります。
一般的な葬儀は200万円程度かかりますから、これはかなり少ない金額だといえます。
「20万円」という数字は、葬儀の場においては決して大きい数字ではありません。
このようなこともあり、生活保護葬の場合、必然的に挙げられる葬儀は「火葬式(直葬とも)」のみに限られます。
火葬式は、原則として宗教者を呼びません。
また通夜や葬式・告別式も行いません。
火葬炉の前で簡単なお別れをして火葬をし、収骨をして終わりとなる葬儀です。
また食事(会食)の席も設けないのが原則です。
この形式は、「もっとも簡素な葬儀」といわれています。
生活保護葬の場合、一般葬よりも小さな家族葬も、また(2日間にわたって行われることが多い)家族葬よりも小さい一日葬も選択できません。
このため、「苦労をしていた人なので、お見送りだけはしっかりやりたい」「豪華な葬儀を挙げたい」という希望は通りません。
生活保護葬のときに出される「20万円(前後)」という金額は、全額を受け取れるわけではありません。
「生活保護世帯に所属する施主(喪主)であっても、財産があるのであればそれを使い、それでもなお足りない部分を補助する」という考え方をするからです。
そのため50000円を用意できるのならばまずはこれを出し、自治体から15万円(前後)が支給されるという仕組みです。
これは、葬祭扶助制度の持っている性質にもよります。
葬祭扶助制度はあくまで、「最低限の生活や葬送儀礼を執り行うための費用を出す制度」にすぎません。
基本的な考え方として葬儀はそれぞれの家庭で行うべきというものがあって、それでもなお足りない部分を自治体が補う……としているのです。
このため葬祭扶助制度を使って大きな葬儀を挙げることはできませんし、自分のお金があるのにまったく出さずに葬祭扶助制度のお金だけを使って葬儀を挙げることもできないのです。
生活保護葬の場合、「葬儀が終わった後に申請する」ということはできません。
必ず葬儀を行う前に申請する必要があります。
なお手続きに関しては後述します。
生活保護葬の手続きは、以下の通りです。
役所の福祉課やケースワーカーに連絡をし、故人が旅立ったことを告げます。
葬祭扶助制度の申し込みを行います。
対象となるのは、「その住所を管轄する福祉事務所」です。
上でも述べたように、この手続きは、必ず葬儀前に行わなければなりません。
葬儀社に連絡します。
役所側から、「生活保護葬に対応していり葬儀会社」を提案してもらえることもあります。
葬儀社に連絡をする場合は、生活保護葬を希望することを伝えるようにしておくと話が通じやすくなります。
葬儀を行います。
の後に支払いを行うことになりますが、生活保護葬の支払いは福祉事務所が行うことが多いといえます。
生活保護葬では、できることが極端に少ないといえます。
しかし「まったく何の葬儀も行わずにお見送りをしなければならない」ということはありません。
この点は安心です。
また納骨の場所や形態も、「合葬」を選べば費用は抑えられます。
50000円程度で埋葬できることもあります。
なお生活保護葬を行う葬儀社は、そのノウハウを持っているところも多いといえます。
不明点などがあったら何でも聞いてみてくださいね。