「セレモニーホール」とは、基本的にはそれぞれの運営団体葬儀会社が管理する葬祭会場を指す言葉です。
多くのセレモニーホールは「その運営団体・葬儀会社の持ち物」であるという都合上、「特定のセレモニーホールを使いたい」と思った場合はその運営団体・葬儀会社と契約することが前提となります(ただし、レンタルできるセレモニーホールの場合はこの限りではありません)。
今回はこの「セレモニーホール」を取り上げて、そのメリットとデメリットについて詳しく紹介していきます。
「セレモニーホール」は、しばしば「葬儀のためのホール」と訳されますが、これは厳密には正しい表現ではないといえます。
単純に「セレモニーホール」としたときには、結婚式に使われるホールなども含まれるからです。
ただ、葬儀のときに使う「セレモニーホール」は、「葬儀に特化した会場であり、それぞれの運営団体・葬儀会社が持つもの」という意味合いになります。
今回は特記しない限りはこちらの解釈で解説していきます。
セレモニーホールのメリットは、「葬儀用に作られたセレモニーホールであるため、葬儀を行いやすい作りになっている」という点が挙げられます。
通夜~葬式・告別式を行うための会場には祭壇を置けるようになっていますし、僧侶の控室や親族控室、初七日法要などを行う部屋、精進落としの料理を食べる部屋などが用意されています。
「セレモニーホールで、火葬以外のすべての葬送儀式」を完了できるようになっていることが多いです。
このため、「通夜が終わった後に別の場所に移動して、そこで食事をとる」「通夜の後に宿泊施設に行かなければならない」などのようなことがありません。
1つの建物の中でほとんどすべての工程を終わらせることができるため、無駄が少ないのです。
セレモニーホールは、バリアフリー対応になっているのが基本です。
段差がない(あるいは少ない)のは当たり前ですし、車いす用のトイレなども完備しています。
2階以上があるセレモニーホールの場合はエレベーターも用意されており、足腰が弱い人でも問題なく移動できるようになっています。
ホームページなどで、広々としたセレモニーホールの写真を見たことのある人もいるでしょう。
人によっては、「自分たちは家族葬を希望している。
規模も大きくないのに、こんなに広いセレモニーホールで葬儀を行ったらガラガラに見えて寂しく感じそう」と思うことでしょう。
しかし実際には、多くのセレモニーホールは「広さの調整」ができるようになっています。
パーテーションで区切るなどし、小規模の葬儀には小規模の葬儀に合わせた広さをつくることができるようになっているのです。
このため、「小規模な葬儀を、広すぎるところで行うこと」を避けられます。
なお逆に「大規模な葬儀」に対しても、セレモニーホールはよく対応しています。
広いセレモニーホールの場合、すべての会場を解放した場合1000人を超える参列者を受け入れることが可能なことも多く、参列者の数によって自在に調整ができます。
これはセレモニーホールによって多少の違いがあるのですが、セレモニーホール・葬儀会社のなかには、「セレモニーホールのなかに、スタッフルームを配している」というところもよくあります。
スタッフルームは、多くの場合セレモニーホールの奥まった部分に設けられています。
通夜~葬式・告別式が始まる2~3時間ほど前、また終わってから2~3時間はスタッフが滞在していることが多く、わからないことはすぐに聞きに行けます。
彼らは「依頼している葬儀会社のスタッフ」であるため、葬儀の流れや葬儀全般の常識に明るく、非常に頼りになる存在です。
なお真夜中にはスタッフルームが無人になることがあります。
しかし大きなトラブルがあった場合は、慌てずに緊急対応用の電話番号に電話をかけてください。
葬儀会社は365日24時間対応を旨としているため、当直の人間などにつながります。
基本的にはセレモニーホールは、
- ・葬儀に特化した場所である
- ・バリアフリーも完備で、施設内の設備も充実している
- ・葬儀会社の社員がスタッフルームに控えているため、わからない点もすぐに聞くことができる
- ・パーテーションなどで適宜スペースを調整してくれるため、小規模な葬儀であっても寂しさを感じない
など、非常にメリットの多いものだといえます。
ただしセレモニーホールにもデメリットがあります。
まず1つめに挙げられるのは、「ほかのご家族とかち合う可能性がる」という点です。
広く作られたセレモニーホールの場合、同日に2つ以上のご家族が利用することになる場合もあります。
このため、別のご家族とかち合う可能性がゼロではないのです。
2階建て以上のセレモニーホールの場合、「A家様は1階で、B家様は2階で」などのように分けられることが多いといえます。
しかし階段やエレベーターでの行き来は当然自由であるため、顔を合わせる可能性もあります。
これを避けるためには、「一軒家タイプのセレモニーホール(民家のようになっており、自宅葬のような感覚で使える)」などを選ぶとよいでしょう。
また人によっては、「セレモニーホールはとても商業的な感じがするので好きではない」と思うこともあります。
寺院などで行う葬送儀礼とは異なりどうしても荘厳さに欠けるのは事実です。
またセレモニーホールは、「特定の宗教」のみを扱うわけではないため、「仏教を深く信仰していたので、最初から最後までその雰囲気を感じられる場所でお見送りをしたい」と考えるご家庭にはやや不向きかもしれません。
セレモニーホールは、「葬儀の外注」が当たり前になってきた現在においては無視することのできない選択肢だといえます。
さまざまなメリットを持つ選択肢でもありますが、デメリットにも注目し、「自分が葬儀を行いたい場所はどこか」を選ぶ参考にしていってください。
なおセレモニーホールの多くは、見学者を受け入れています。終活の一環として見に行くのもよいでしょう。