葬儀のかたちとして、「家族葬」は現在ではメジャーな選択肢となっています。
小さな葬儀を希望する人も多く見られるようになりましたし、この傾向は今後も続くと思われます。
しかしそれでも、一般葬(広く参列者を入れ、大勢でお別れするかたち)に比べると、いまだ家族葬の知名度は低いといえます。
そのため、家族葬を行う喪主(家族)側からみたときには「会社にはどのように連絡をすればいいのか」という問題が生じます。
また逆に会社側が「社員から家族葬をすると報告を受けたがどうすればよいか」と悩むこともあります。
このようなときにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、「喪主(家族)側からみた家族葬」と、「会社側からみた家族葬」についてその答えを解説していきます。
「家族葬」は、一般葬に比べれば非常に小さな規模で行われることが多いものです(一部例外はあります)。
家族葬のもっとも大きな特徴は、「故人あるいは家族が親しく付き合っていた人や、親族などの血がつながった人しか葬儀に参加できない」という点にあります。
一般葬の場合は、新聞や会社に告知をして広く参列者を受け入れます。
対して家族葬の場合、喪主(家族)が声を掛けた人しか参列しません。
家族葬のメリットとデメリットについても見ていきましょう。
家族葬の場合は小規模な葬儀となるため、挨拶などに時間をとられることがありません。
そのため、故人とのお別れの時間をゆっくりととることができます。
また葬儀自体にかかる時間も短くなるため、肉体的な負担も少なくなります。
葬儀費用も安く抑えられることから、家族葬を規模する人も増えています。
もっとも、家族葬が「経済的な」葬儀か? と言われると、判断に困るところはあります。
たしかに家族葬の場合は一般葬に比べてかかる費用は少なくはなりますが、その分不祝儀も少なくなるからです。
また、「この人に声を掛けて、この人に声を掛けなかったこと」が原因となって、人間関係のトラブルに発展することもあります。
このような特徴のある家族葬ですが、それでもこれを完全に「だれにも言わないで行うこと」は極めて困難です。
その理由として、「忌引き休暇をとるときは、会社や学校に連絡をしなければならない」というものが挙げられます。
「家族葬を行うこと」が決定しており、会社や学校に知らせるのは葬儀の忌引き休暇をとるためである……という場合は、その旨をきちんと伝えなければなりません。
そうでなければ、会社側は不祝儀を用意したり供花・供物を出したりする必要があると判断することが多いからです。
家族葬であることは、ごく簡単に伝えればよいとされています。
「葬儀は親族のみで行います」などのようにするのです。
こうすれば、多くの人は家族葬であることを察してくれます。
また家族葬を行う場合は、
- ・行う日
- ・行う時間
- ・行う場所
は記載しない(伝えない)ようにします。
家族葬の参列者側のマナーとして、「時間や場所が書かれていない葬儀には参列しない」というものがあるからです。
なお会社によっては、「社員及び社員のご家族が亡くなった場合は、不祝儀や供花・供物を用意する」としているところもあります。
家族葬の場合、供花や供物はお断りすることが多いといえます。
また不祝儀も辞退するケースが多々あります。
このため、この方針で行くのであれば、「不祝儀や供花供物を辞退する」という意向も示しておいた方がよいでしょう。
ただし電報(弔電)に関しては、
- ・スペースを圧迫するものではない
- ・ハガキや手紙でお礼するだけでよい
ということから、電報(弔電)は受け取るケースが多いといえます。
忌引き休暇は会社によってその長さが異なります。
ただ近しい人が亡くなった場合は、2週間程度にわたりこれを取得することになるでしょう。
その間は忌引きが明けた後に、会社に個別包装のお菓子などを持っていって挨拶をすると丁寧です。
なお、「家族葬としているが、非常に親しくお世話になっている人が会社にいる」「父は50代で亡くなったが、父をかわいがってくれていた人が今も父と同じ会社にいる」などのような場合は、個別に声を掛けても構いません。
これは「仕事」という場所を超え、「喪主(家族)や故人と親しかった人」に分類されるからです。
ただ、「家族葬であること」「日時は記さない」などのような対応をしていても、「招いていない人が葬儀の日に足を運んできた」という状況になることはあります。
この場合はそのお気持ちを受け取り、参列してもらうようにしてください。
ただし、「不祝儀辞退としているのに、Aさんのものは受け取ってBさんのものは受け取らなかった」などになるとトラブルに発展することもあります。
このため、不祝儀や供花・供物に関しては、受け取らないならば受け取らないという姿勢を、受け入れるならば受け入れるという姿勢を一貫して守るようにしてください。
ここからは、「自分たちが会社側の人間であり、社員から家族葬を行うことを告げられた」というケースについてみていきましょう。
上でも述べたように、家族葬は喪主(家族)からの直接の誘いがなければ参加してはいけません。
日時や場所が記されていないあるいは「家族葬です」と言われているということは、「参列は遠慮してほしい」といった意思表示だと考えてください。
そのため、たとえ家族葬をする日時や場所が分かる立場にいたとしても、参列はしてはいけません。
また、「不祝儀辞退」「供花・供物辞退」の意向が示された場合もそれに従うようにします。
なぜなら、ここで不祝儀や供花・供物を渡してしまうと、相手はそれに対してお返しをしなければならなくなってしまうからです。
喪主(家族)が忌引き明けに出社してきたら優しく迎え入れましょう。
「なぜ家族葬にしたのか」「あなたが休んで大変だった」などのような言葉をぶつけるのは大変な失礼にあたるので、慎みます。