火葬はいつの時代から始まり、また現在はどのように扱われているのでしょうか。
火葬の歴史や諸外国の事情に目を向けつつ、「現在の火葬」について解説していきます。
日本は、かつては「土葬」が基本でした。
亡くなった人は花などを供えられ、土の中に埋められていたのです。
ただ、そんななかでも、一部の地域では火葬がみられたとされています。
6世紀ごろには火葬を行った痕跡があり、その歴史が長いことがわかります。
ただ、「火葬によって弔われたこと」がはっきりしているのは、700年に亡くなった僧侶が最初だとされています(日本書紀にこの記載があります)。
また、天皇であった持統天皇が火葬によってその2年後に弔われ、その後上流階級の間で火葬の文化が広まっていきます。
ただそれでも、火葬の普及率は意外と高くなく、明治時代でもわずか30パーセント程度にしかすぎませんでした。
火葬が「法律」として根付いたのは、1870年代の後半になってからです。
このころに、「公衆衛生上、土葬はよろしくないのではないか」「土葬にするための土地が足りない」といった意見が出てきたのです。
これに従って、火葬が義務付けられるようになりました。
1884年には、今ではなじみ深い言葉となった「火葬場」という単語が登場します。
この「火葬文化」は、日本に広く浸透していきました。
現在では99パーセント以上が火葬で見送られることになっています。
特殊なケース(船の上で亡くなり、かつしばらくは陸につけそうにないなど)を除き、火葬以外が選択されることはありません。
ちなみにこの「火葬率99パーセント」というのは、諸外国からすれば異例ともいえる数字です。
同じ東洋にある国である中国や韓国でも、火葬を行う割合はそれほど多くはありません。
中国では70パーセントを切っていますし、韓国では半数以下となっています。
「火は、罰である」「火によって焼かれてしまうと、死後に復活ができない」と考えるキリスト教においては、基本的には火葬を避ける傾向にあります。
キリスト教の信者が多いアメリカやヨーロッパの場合、火葬でお見送りされるケースは30パーセント程度(無宗教の人が多い地域では火葬が一般的)であり、特にイタリアでは2パーセントに届かない状態です。
ただ現在は少しずつ火葬の割合が増えていっているとされています。
このように、「火葬」に関しても「お国柄」が出ているのです。
ここからは実際の葬儀現場における「火葬」についてみていきます。
まずご遺体を火葬するためには、死亡届を出さなければなりません。
死亡届は医師から交付されるものであり、「その人が息を引き取ったこと」などを証明する書類です。
この書類と、「火葬(埋葬)許可申請書」を市町村の役所の窓口に提出します。
特段の不備がなければ、そのまま火葬(埋葬)許可書が交付されます。
なお現在の葬儀は葬儀会社を介して行うことが一般的かと思われますが、この場合はここまでの手続きは葬儀会社が代理で行ってくれるケースが非常に多いといえます。
火葬(埋葬)許可書が出されても、すぐに火葬を行えるわけではありません。
2つの要素をクリアしなければならないのです。
1.死後24時間を経過していること
2.火葬場を予約すること
1に関しては、「昔は、死亡しているかどうかの判断技術が未熟であったこと」に由来しているとされています。
死亡したと思われていたものの、実際には仮死状態であり息を吹き返すこともありました。
この可能性を排除するために、「死後24時間以上経ってからの火葬」が義務付けられたと考えられています。
2に関しても見ていきましょう。
日本の場合、火葬は基本的には「その人の住民票があった地域にある火葬場」で行われます。
これ以外のところでもできないわけではありませんが、火葬を行うための金額が跳ね上がります。
そのため、特段の事情がない限りは住民票のある火葬場を使うのが基本です。
なお火葬(埋葬)許可書の交付には、「どこの火葬場で火葬を行うか」の記載が必要です。
火葬場は、飛び込みで使えるものではありません。予約が必要です。
そのため火葬場の休みやスケジュールをチェックし、空き状況に応じて日時を決める必要があります。
なお火葬場は土日祝日は開いていますが、年末年始は休みのことが多いといえます。
また友引の日も定休日としているところがあります。
友引や年末に関しては「開いている」としているところもありますが、1月1日はほぼすべての火葬場が定休日となります。
このような状況を踏まえると、「火葬が行われるタイミング」を知ることができます。
「24時間以内に行うことはできない」とされているため、火葬が行われるタイミングは必ず「亡くなってから1日後以降」になります。
すべての統計をとったわけではありませんが、
11日17時 | ご臨終 |
12日の夜 | お通夜 |
13日の朝~昼 | 葬式・告別式 |
13日の昼 | 火葬 |
というケースが比較的多く見られます。
また、11日の早い段階(夜中の2時など)に亡くなった場合で、かつそれほど大規模ではない葬儀の場合は11日の夜から通夜が行われることもあります。
対して、首都圏などの場合は火葬場の「枠」の争いがかなり熾烈だといえます。
火葬場のスケジュールがいっぱいで、亡くなってからしばらくしなければ火葬を行えないなどのケースも出ているのです。
最大で1週間程度も待たされることもあり、ご遺体の状態が心配されるケースもあります。
いずれにせよ、「火葬をするタイミング」はご家族の一存だけで決められるものではありません。
もちろんできるかぎりご家族の気持ちやスケジュールに添いたい・添おうとするのが葬儀会社ですが、火葬場の空き状況などによっては多少左右されることはあります。
また、「絶対に来てほしい人が現在海外にいて、すぐに戻ってくるといっているが2日ほどかかる」などの事情がある場合は、その旨葬儀会社のスタッフに伝えてください。